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当院の脳神経外科の取り組み

平成19年9月より、脳神経外科においても外来・入院診療を毎日行なう体制が整いました。また、脳神経外科が取り扱う各種疾患における手術治療も可能となりました。常勤医師・非常勤医師が、老若男女、急性・慢性疾患を問わず中枢神経系の病気全般にわたって診療に当たります。交通事故や転落などの重症の頭部外傷および突然の頭痛や麻痺、急激な意識障害などをきたす脳卒中においては、一刻の猶予もなく治療を開始しないといけない場合があります。このような超急性期に専門的な検査・治療を必要とする疾患に対しては日頃から救急隊と緊密な連絡を取り合いながら対応しております。脳腫瘍・脊髄疾患などの病気に対する手術治療も行います。 また、脳ドッグを中心に、まだ発病されていない脳の病気の発見に力を入れるとともに、将来の発病を未然に防ぐための予防的外科治療にも積極的に取り組んでいます。 以下に、当院の脳神経外科で治療ができる主な疾患を説明いたします。

01 脳卒中の治療

CASE01

くも膜下出血:

突然激しい頭痛をきたし、意識も障害され、命にかかわることも多い病気です。くも膜下出血には出血を招来する根本原因があります。多くの場合、脳の動脈の一部が風船のように膨らみ、それが裂けて出血する破裂脳動脈瘤です。一旦破裂した動脈瘤は再出血をきたして容態がさらに悪化する恐れがあるので、直ちに我々脳神経外科医による専門的な治療が必要です。くも膜下出血の診断は頭部CTで容易にできますが、脳動脈瘤の有無や部位の診断には3D CT(三次元CT)やMRA(MRIを用いた脳血管描出)が有用です。破裂脳動脈瘤に対しては原則的には脳動脈瘤頚部クリッピング術という手術用顕微鏡を用いた根治術を施行します。水頭症やしばらくして脳動脈が狭窄するなど特殊な病態の合併も多い病気です。


CASE02

脳梗塞:

脳動脈が何らかの原因で詰まり、脳の組織が壊死することを言います。脳血管自体の動脈硬化によるもの(脳血栓症)と、体の他の部位にできた血の塊(血栓)などが脳に飛んできて起こるもの(脳塞栓症)とがあります。症状は脳梗塞が生じたに部位により異なりますが、どちらかの手足が動かない片麻痺や喋られなくなる失語症などが多い症状です。脳梗塞の治療は早ければ早いほど後遺症が少なくなります。一刻も早く専門家による検査・治療を受けることが重要です。


CASE03

脳梗塞に対する血栓溶解療法:

最近、症状発現から3時間以内の超急性期の脳梗塞であれば詰まった血の塊を積極的に溶かす治療を行うようになりました。これを血栓溶解療法と呼び、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)という薬を静脈から投与します。劇的に麻痺などの症状が回復する方も中にはおられます。この治療には時間的な余裕がありませんので、救急隊との綿密な打ち合わせと病院内の準備体制が必要です。この治療法の副作用で最も恐ろしいのは脳内出血を起こし、容態が悪化することです。よって、血栓溶解療法ができる病院の条件には脳神経外科のバックアップが必須となっています。当院でも、院内のシステム作りと救急隊との定期的な情報交換会を行っております


CASE04

脳内出血:

突然の頭痛、麻痺を伴って意識が悪化します。高血圧により直径1mm以下の細い動脈に生じた動脈硬化が破綻して脳実質内に出血します。頭部CTで容易に診断がつきます。出血量が多量で生命が危うい場合には緊急手術を要することがあります。出血量がそれほど多くないときは、定位的血腫吸引術と呼ばれるより低侵襲の手術を行います。特殊な器具を頭につける必要がありますが、全身麻酔をかける必要はなく、頭蓋骨に開けた小さな穴から細い針を刺し貯まった血液をゆっくり抜きます。この手術は侵襲が少ないのでリハビリを中断することなく継続して行える長所があります


02.脳卒中の予防的外科治療とは

CASE01

未破裂脳動脈瘤:

脳動脈瘤が破裂し一旦くも膜下出血となれば約半数のかたが命取りとなります。画像診断の進歩により脳動脈瘤がMRAで非浸襲的に発見できるようになりました。一般に4mm以上の動脈瘤は出血しやすいと言われています。できた場所、大きさ、形によって違いますが、ある程度の大きさであれば何らかの処置を行い、くも膜下出血の発症を予防することをお勧めします。薬などで動脈瘤が消失することはありません。処置のひとつは脳動脈瘤頚部クリッピング術です。手術で動脈瘤の根元をクリップで挟み、動脈瘤に血をいかなくする手術です。手術による大きな合併症の発生率は3~4%ほどです。もうひとつの処置は血管内手術と呼ばれるコイル塞栓術です。足のつけねから動脈に入れた細い管(カテーテル)を脳の動脈瘤まで導き、内部にプラチナのコイルを充填します。一般に、手術の難しい動脈瘤や頭を切るのが嫌な方に行われています。この処置による合併症の発生率も3~4%ほどと報告されています。もし、動脈瘤が見つかれば、患者様やご家族様と十分に話し合った末今後の方針につき相談させていただきます。


CASE02

頚動脈狭窄症:

脳に繋がる頚動脈に動脈硬化が生じたことが原因で脳梗塞を発症する場合があります。数分間で治った麻痺や失語症(一過性脳虚血発作)で気付く場合もあります。食事の欧米化に伴って患者数は増えつつあります。MRAや頚動脈エコーで調べた結果、頚動脈の動脈硬化が限度を超えている方には、動脈硬化の部位を取り除いて血管を広げる頚動脈内膜剥離術という手術を行います。狭窄率が60%以上に進行した方では、手術をしたほうが薬だけより脳卒中の予防効果が認められています。


CASE03

脳主幹動脈閉塞・狭窄症:

脳の主要な血管が閉塞または高度に狭窄しているにもかかわらず、自然にできたバイパスのおかげで幸い大きな脳梗塞に陥らなかった方がおられます。しかし、脳が本来必要とするに足るだけの血液が流れていない方は、やがて脳梗塞になったり、慢性的な血流不足のために認知症になったりする危険があります。このような方では頭皮の動脈を脳内の血管につなぎ、手術で新たなバイパスを作り脳血流量を増加させる浅側頭動脈‐中大脳動脈吻合術を行います。


03.頭を強打したときの病気

CASE01

脳挫傷・頭蓋内出血:

不慮の事故で頭部を強打したときには、脳に損傷が生じたり、頭蓋骨のなかに出血をきたしたりします。受傷後に意識がおかしいほど脳の損傷も大きく、出血の可能性も高くなります。頭部CTで診断できます。なかには徐々に出血が増え、後で容態が悪化する場合があるので、意識の変化を十分に観察することが大切です。このような場合、頭部CTを頻回に行い、経過を追わないといけないので、脳神経外科医による診察が望まれます。出血が多量な場合や脳の損傷が広範囲におよぶ場合には、血腫や脳挫傷部位を取り除き減圧しないと命取りになります。


CASE02

慢性硬膜下血腫:

頭を打った後、忘れたころに脳の表面に血液がたまる慢性硬膜下血腫という病気があります。頭部打撲後1~3ヶ月後におこることが多く、ご高齢の方に多い病気です。ご高齢の方では、頭痛はあまり訴えられず、急に認知症になられたり、手足の麻痺が出現したなどの症状で発症されます。頭部CTで診断がつきます。頭蓋骨に小さな穴を開け、血液を洗い流す簡単な穿頭血腫洗浄術と呼ばれる手術で大半の方は劇的に回復します。局所麻酔で施行可能ですので100歳近い方にも行える治療法です。


04.脳腫瘍の治療

脳には良性から悪性の腫瘍まで多種にわたる腫瘍ができます。また、身体の他の部位にできた癌が脳へ転移することも多いです。症状は進行性の頭痛、手足の麻痺、耳鳴り、視野が欠けるなど多彩です。診断には造影剤を注射して行うCT・MRIが有用です。治療は脳腫瘍を摘出するのが主体です(脳腫瘍摘出術)。転移した脳腫瘍に対しても手術療法を行う場合があります。脳腫瘍は手術で完全に直せるものもから、直せないものまであります。後者の場合には、いかに有意義な生活を長く送れるかに主眼をおいた治療を提案しております。

05.手術で直せる認知症は

CASE01

特発性正常圧水頭症:

認知症のなかで、治せる認知症として最近注目を集めています。脳は内・外ともに脳脊髄液という水で満たされています。この脳脊髄液が異常に溜まったために脳の機能が障害される病気です。外傷やくも膜下出血のあとに起こるものを続発性水頭症、原因が見当たらないものを特発性水頭症と呼びます。脳脊髄液の吸収が悪くなったためと考えられています。症状は歩行障害・認知症・尿失禁の3つを主体とします。歩行障害としては、少し足を開いて小股でよちよち歩く、足が上がらずずり足となる、第一歩がうまくでない、うまく止まれない、方向を変えるときに片足を軸として回るなどが特徴です。認知症は、物忘れが始まり、意欲・自発性が低下し、一日中ボーッとしていることが多くなります。トイレが頻回となり、尿意が我慢できなくなり、ついには尿失禁をきたすようになります。頭部CTやMRIでは正常圧水頭症に特徴的な所見が得られます。正常圧水頭症を疑った場合、髄液タップテストという検査を行います。腰から脳脊髄液を少量排除して症状が改善するかを診断します。数日の入院検査となります。治療法は、髄液シャント術と呼ばれる比較的簡単な手術です。過剰に溜まった髄液を他の体腔へ流す道筋を作る手術です。一般的には脳または腰から腹腔にまでシリコンでできた細い管を皮下に通し、余分な脳脊髄液を腹膜から吸収されるようにします。手術の治療成績は歩行障害の改善が9割、認知症・尿失禁の改善が5割です。ただし、病気が進行し時期が遅くなれば症状の改善率が悪くなりますので、早期発見・早期治療が肝要です。早めにご相談ください。


CASE02

慢性硬膜下血腫:

頭を打った記憶がなくても慢性硬膜下血腫を発症することがあります。簡単な手術により良くなります。頭部外傷のⅢ項を参照してください。


06.顔面の痛み・顔面のけいれん(ピクつき)

顔の痛みやピクつきでお悩みの方は

顔に耐え難い痛みが刺すようにまたは焼けるように走る三叉神経痛と、顔がピクピク勝手にひきつる顔面けいれん(痙攣)は手術で直ります。これらの病気の原因は三叉神経および顔面神経に脳血管が当たり圧迫し始めたことにより発症します。神経が脳幹から出たところでの圧迫です。神経から圧迫血管をはずし、クッションを入れて圧迫を解除する微小脳血管減荷術を行うと90%ほどの方が完全に症状がとれます。手術が根本的治療法ですが、手術が嫌な顔面けいれんの方には3~6ヶ月ごとに少量のボツリヌス毒素を、ピクついている筋肉に注射する方法もあります。ご相談ください。

07.手術機器

脳外科の多くの手術は手術顕微鏡を用いて手術部位を拡大して行うのでマイクロサージャリーと呼ばれます。当院には最新鋭の手術用顕微鏡が入りました。その他に、定位脳手術用の器械、手術中に脳血管に血が十分に流れているかどうかを調べる超音波血流計や脳腫瘍の部位や出血の部位を的確に描出できる超音波診断装置があります。

08.脳の病気の発見に威力を発揮する当院の画像診断機器

CASE01

エリアディテクターCT:

迅速に対応すべき脳の病気、たとえば、脳卒中の病型診断(くも膜下出血? 脳内出血? 脳梗塞?)や事故などで頭を強打したときに出血がないかなどを診断するときに大変有用です。検査は通常1~2分ほどで終わります。また、造影剤の点滴を行えば、脳の血管の病気を3次元で映し出すことができます(3DCT)。24時間体制で緊急対応しております。


CASE02

MRI:

通常予約検査となりますが、脳の小さな病変(脳腫瘍や脳梗塞など)や脳の血管の病気のスクリーニングに有用です。MRIを用いて脳動脈を描出し、脳動脈瘤がないか? 脳動脈に狭窄病変がないか? などを調べることをMRA(MR 血管撮影)と呼びます。脳ドッグでも中心的な役割を果たします。また、CTでは判らない超早期の脳梗塞や無症候性の脳内出血の発見にも威力を発揮します。検査には15分ほどかかります。必要に応じて24時間対応しております。


CASE03

頚動脈エコー(超音波検査):

脳につながる頚動脈に狭窄がないかどうかの診断に使います。また、あった場合、その動脈硬化が脳卒中を起こしやすいものかどうかの判定に有用です。さらに、全身の動脈硬化の程度も推定できます。予約検査となっております。